よりよい税制確立のために
東京税理士政治連盟 会長 名倉明彦
令和7年度税制改正では、本連盟要望事項のうち所得税の基礎控除額の引上げが実現しましたが、改正法成立までには紆余曲折がありました。
まず、自民・公明の税制改正大綱では10万円の引上げが記載され、同内容で閣議決定されました。次に自民・公明・国民の幹事長合意では、「178万円を目指して」協議されましたが整わず、最終的には自民・公明両党の提案により課税最低限を160万円とし、年収200万円超の所得層に対しては段階的に基礎控除額を上乗せするという内容で可決されました。
ここで重要なことは、自民党自身が明らかにしているようにこれは物価上昇に対する対策であり、時限措置であるということです。また、令和2年分から基礎控除に所得制限が設けられたことは、基礎的な人的控除は憲法第25条による生存権に基づくとする税理士会の主張からすると、意味合いが異なるものとなってしまっています。
今年度税制改正審議に関連して、立憲民主党から衆議院・財務金融委員会に所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されており、当該修正案には国税通則法の一部改正案が含まれておりました。内容は、第1条の目的条項の変更や第4条の2を新設して「納税者権利憲章」を作成・公表することが含まれるなど、本連盟の要望に沿ったものとなっており、懇談会等を通じた意見交換の成果
がみられたものと評価しております。さらに同委員会では「納税者権利憲章の策定を含め納税環境整備について検討を行い、その実現に努める」ことが附帯決議として議決されており、今後とも実現に向けて活動したいと思います。
去る3月18日には東京税理士会理事会で令和8年度税制改正意見書が議決されましたので、本連盟でも各単位税政連の協力を得て要望を取りまとめ、国会議員等に令和8年度税制改正について要望・陳情し、よりよい税制の確立に向けて努力してまいります。